NeoSchool様、NPO法人まめ塾様、野田市立七光台小学校の上園先生と座談会形式でディスカッションしました。
これまで、弊社と千葉県野田市を拠点とするNeoSchool様、NPO法人まめ塾様、野田市立七光台小学校の上園先生と、不定期に集まりながらDobotMagician/Liteを使ったロボット/プログラミング教室について、実際にワークショップを企画しながらSTEM教育やプログラミング教育の在り方、運営方法、課題などについて研究、実証実験を進めてきており、既に1年以上の活動になりました。コロナ禍という大きな社会の変化に直面した今、プログラミング教育の現場はどうあるべきか、実際の教育現場での課題や教材提供者に求めることなど、ざっくばらんに座談会形式でディスカッションしました。
教育現場で日々奮闘されている先生方、教育関連に携わっていらっしゃる皆様に少しでもご参考になればと思い、ディスカッション内容をご紹介いたします。
参加者:上園先生(上)、鈴木先生(鈴)、岩瀬先生(岩)、坂田さん(坂)、森田(司)
司:
現在、小学校でのプログラミング教育の現場はどのような状況ですか?
上:
GIGAスクール構想のもと、タブレットPCが生徒一人ずつに支給されることが決まり、準備を進めているところです。プログラミング教育としてはScratchを使った授業はタブレットがあれば実施可能だと思います。ロボットアームは人数分の確保は厳しいので、シミュレーション環境が使えると授業に取り入れやすいです。
鈴:
小学校の先生は、みんなScratchを使っていますか?
上:
使っている先生もいれば、まったく触らない先生もいらっしゃいます。
そもそも現場の忙しさもあって、時間を十分に確保できない苦しさもあるのが現状です。
特に今は、コロナの影響で通常の教科学習のカリキュラムをこなすだけで手いっぱいの状況です。それでも土曜授業の時間を使って少しずつプログラミング教育を進めているところです。
教科書の中のコンテンツに、プログラミングに関連した内容が少しずつ入ってきているので、担任の先生が少しずつ授業に取り入れている事例も出てきていますが、やはり通常のカリキュラムを優先させるため、深い学びまでには至れていないのが現状です。
坂:
教科書があればある程度対応できると思いますけど、先生が独自に準備しないとならないことが多いとなかなか実際の授業に取り入れるのは難しいですよね?
上:
そうですね。授業ですぐに使えるようになっていれば取り組みやすいのですが、今は独自に準備をする時間を確保するのが厳しいというのが現状です。
司:
ロボットアームを授業へ展開させるためには、どんなコンテンツがあると活用しやすいですか?
上:
テキストやマニュアルのような「モノ」だけではなく、「人、またはサポート」があれば授業に使っていくことができると思います。
鈴:
やはり、人に依存するところは大きいですね。リテラシーや知見のある先生がいらっしゃる学校はどんどん進んでいくが、そうでないとなかなか難しいものがある。先生が他校へ移動してしまうと状況は一気に変化してしまう。
司:
海外の学校では、学校の外から専門の技術者が先生としてプログラミングなど専門的な授業を行っている事例が多くあるが、日本でそのような活動は広がりそうですか?
上:
IT関連会社からはSNSやオンライン会議システムを使って、教室とつなぐというような提案を目にするようになっています。
司:
CoderDojoのメンターの方が、学校に派遣される、または学校から講師の依頼を受けるということがあると聞いたことがあるのですが、そのような活動は広がっていますか?
坂:
Dojoのメンターが、個人として依頼を受けて、学校でワークショップをしたりすることはよくあります。ただ、可能性としてDojoが学校の教育現場に支援していくということはあると思います。
司:
弊社もCoderDojoさんの活動に参加した経験がありますが、メンターの皆さんは子供たちの動機付けや教室の運営がとても上手だなぁと思ったことがたくさんありました。
鈴:
まさにそこが大事 なんだと思います。単にソフトウェア技術者や教材開発者がそこにいても、質の高い教育を現場で提供することは難しいと思います。
単に教材というコンテンツだけではなく、教える人材がパッケージされていると現場としては受け入れやすいのではないでしょうか。
坂:
浸透させるには人材が重要。現場の先生にすべてを強いるのは酷だと思います。
上:
そうですね。マニュアル通りにやってもトラブルが発生することがある。そんなとき、すぐにトラブルシューティングしてくれる人がいると安心して授業を運営できる。
鈴:
仮にオンラインだったとしても、現場にいないとわからないトラブルもある。トラブルの解消に時間がかかってしまうと貴重な時間を浪費してしまうので、現場の先生に寄り添える人がいることは重要ですね。
鈴:
取扱のしやすい教材であれば、今後使っていく可能性はありますし、自治体と一緒になったさまざまな提案を考えることもできると思います。
司:
STEM教育の実証実験として取り組まれるというスタートでもいいので、ぜひ協力させていただきたいです。
鈴:
是非、教材を使った年間計画を作って提案してみましょう。
司:
NPO法人を主宰されている岩瀬先生には、人材を育てるような講座の企画などもお願いできたらうれしいです。
岩:
一緒に取り組めば様々な企画ができると思います。是非やりまし ょう。
鈴:
さらに発展形としては、プログラミングを学んだ子供たちがさらに子供たちを教えるというようなサイクルができあがってくると面白いと思います。教えるという行為は自身の学び、理解を深めるのにとても有効だと考えています。人に教えて学ぶということができると学びのスピードを速めることになりますね。
司:
昨年、鈴木先生のお子様がファシリテータとして小学校の授業で先生役をされていましたね。とても面白い取り組みだったと記憶しています。
坂:
CoderDojo柏でも、経験のある中学生がメンターとなって小学生を教えるというサイクルを実行しています。子供たちにとってプログラミングをするだけではない貴重な経験を積んでいると思います。
司:プログラミングやITなどのSTEM教育を効果的に実施するには、人的なリソースがカギを握り、その人材を実際の現場の教育の現場で育てながら進めていくという発想はとても意義深いと思います。人に教えることを通して自分の学びが深くなるというサイクルを回せると、より有機的な授業内容に発展しそうですね。
技術者や教材開発者のみの視点ではなかなかわからないSTEM教育の現状や、現場で求められていることについて、ざっくばらんにお話させていただくことで多くの気づきを得ることができました。今回のディスカッションの中では、教材やコンテンツという「モノ」だけではなく、困ったときに支援できる人材やサービスといった「こと」がSTEM教育やプログラミング教育にとってとても重要であるということを学ばせていただきました。引き続きこのような交流を継続することで今後のSTEM教育普及に向けた知見を蓄積して、より現場に寄り添ったご提案に生かしていきたいと思います。また、教育現場との連携を深め、より深い学びの機会を提案できるよう、今後も尽力してまいります。
本日はお休みの中ご参集いただき、貴重なご意見を頂きましてありがとうございました。